鈴木智子 tomoko suzuki

彼女は、思った以上に不器用である。
お米を研げば十粒以上はこぼすし、
形のよいオムレツを作るのに三年を費やしたり、
縫い物をするたび必ず絆創膏のお世話になったり、とにかく不器用である。
そんな彼女が何故ものづくりの道を歩んでいるのか。
たぶん彼女なりのゆっくりとした時間の中での作業に幸せを見つけたからだろうと思う。
人よりも遅い分、それだけ彼女の想いが作品の中に刻まれてゆく。
その服を見たり、布小物に触れたりすると、ふんわりとした気分になるのは、たぶん僕だけではないと思う。
冬のある日、僕は鉄砲を持って狩りに行く。
彼女は陽だまりの中で、麻の上着に刺し子をしている。
ゆっくりとした時間が過ぎていくのだ。







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